経理業務委託の源泉徴収は、業務内容によって対象/対象外が分かれます。実務での判定基準と、計算方法、発注者・受託者それぞれの対応を整理しました。
基本ルール
源泉徴収の基本ルール:
- 委託先が法人の場合: 原則として源泉徴収不要
- 委託先が個人事業主の場合: 業務内容により源泉徴収が必要
個人フリーランスへの経理業務委託では、業務区分で判定します。
経理業務委託の源泉徴収判定
所得税法204条1項の列挙業務に該当するか否かで判定します。
| 業務 | 源泉徴収 |
|---|---|
| 記帳代行 | 不要 |
| 月次決算支援 | 不要 |
| 請求書発行・売掛金管理 | 不要 |
| 給与計算 | 不要 |
| 年次決算書作成 | 不要 |
| 税務相談・税務申告代理 | 必要(税理士業務相当) |
| 税務書類の作成 | 必要(税理士業務相当) |
結論: 純粋な経理業務なら源泉徴収不要、税理士業務に該当する部分があると必要。
源泉徴収が必要な場合の計算
源泉徴収額は、支払額ベースで計算します。
基本式
- 支払額100万円以下: 支払額 × 10.21%
- 支払額100万円超: (支払額 - 100万円) × 20.42% + 102,100円
計算例
- 月額20万円の業務委託 → 源泉徴収20,420円、手取り179,580円
- 月額80万円の業務委託 → 源泉徴収81,680円、手取り718,320円
- 月額150万円の業務委託 → 源泉徴収(50万×20.42%)+102,100=204,200円
発注者(企業側)の対応
源泉徴収義務者は発注側の企業です。
- 報酬支払時に源泉徴収して残額を振込
- 翌月10日までに源泉徴収分を税務署に納付
- 翌年1月31日までに支払調書を作成・提出
納付遅延には延滞税がかかるため、経理部門で月次運用が必要です。
受託者(個人事業主)の対応
源泉徴収された場合、確定申告で精算します。
- 請求書には「源泉徴収税額: ◯◯円」を明記
- 支払調書を受領・保管(翌年1月末頃に受領)
- 確定申告書に源泉徴収額を記入
- 所得税が源泉徴収額より少ない場合は還付
消費税との関係
源泉徴収は「所得税」の仕組みで、「消費税」とは別の扱いです。
- 消費税込の請求額に源泉徴収税率を適用
- インボイス登録済なら消費税は発注者側で仕入税額控除
計算例
- 請求額: 税込330,000円(内消費税30,000円)
- 源泉徴収: 330,000円 × 10.21% = 33,693円
- 受領額: 330,000円 - 33,693円 = 296,307円
契約書での明記の重要性
源泉徴収の要否は、契約書にはっきり書いておきます。
- ✅ 「本業務に係る報酬は源泉徴収対象外の経理業務である」
- ✅ 「税務相談に関する部分のみ源泉徴収10.21%を適用する」
- ❌ 明記なし(後で揉める)
インボイス制度と源泉徴収
インボイス制度は消費税の話、源泉徴収は所得税の話で別物です。ただし、実務では両方を同時に考慮します。
- インボイス登録: 消費税の適切な処理のため
- 源泉徴収: 所得税の源泉徴収義務の履行
請求書には、両方の情報を記載するのが現代のベストプラクティスです。
よくある質問
Q: 振込手数料の扱いは?
通常、受託者が負担。報酬から手数料を差し引いて振込。
Q: 年度途中で法人化したら?
法人化後は源泉徴収不要になる。契約書の相手名義変更と請求書の変更が必要。
Q: 源泉徴収を忘れられていたら?
発注者に連絡して、確定申告で自分で精算するか、次回支払で調整するかを相談。