経理業務委託契約書は、業務開始後のトラブル防止に直結します。必ず盛り込むべき8項目を、具体的な書き方と実例つきで整理しました。
1. 当事者情報
契約書冒頭で、委託者(企業)と受託者(フリーランス)の情報を明記します。
- 商号・屋号
- 所在地
- 代表者名
- 法人番号/個人事業主の場合は開業届控え
2. 業務の範囲
最も揉めやすい項目なので、具体的に書きます。
- ✅ 「月次決算業務(仕訳入力月間最大500件、試算表作成、月次報告書提出)」
- ❌ 「経理業務全般」
上限と下限を数字で書くと、追加業務の発生時に別契約として整理できます。
3. 報酬と支払サイト
報酬体系と支払条件を明記します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 報酬額 | 月額80,000円(税別) |
| 消費税 | 別途8,000円(外税) |
| 支払サイト | 月末締め翌月末払い |
| 支払方法 | 指定銀行口座への振込 |
| 振込手数料 | 委託者負担 |
インボイス制度対応で登録番号も記載します。
4. 契約期間と更新
契約期間と自動更新の条件を明示します。
- 契約期間: 2026年5月1日〜2027年4月30日
- 自動更新: 3カ月前までに書面通知がない場合、1年間自動更新
- 更新時の単価改定: 双方協議の上決定
自動更新条項があると、契約継続率が1.5倍になります。
5. 秘密保持義務
経理業務は機微情報を扱うため、NDAは必須です。
- 秘密情報の定義
- 使用目的の限定
- 第三者への開示禁止
- 契約終了後の秘密保持義務期間(通常3〜5年)
- データの返還・廃棄義務
6. 源泉徴収の扱い
受託者が個人事業主の場合、源泉徴収の要否を明記します。
- 経理業務そのもの: 所得税法204条に該当しないため源泉徴収なし
- 税理士業務相当部分: 10.21%源泉徴収
実際の業務内容に応じて「源泉徴収なし」または「源泉徴収10.21%」を明示します。
7. 契約解除条項
トラブル時の対応を事前に定めます。
- 期間途中の解除条件(例: 1カ月前通告)
- 解除時の業務引き継ぎ義務
- 解除時の報酬精算方法
- 違約金の有無(ある場合は金額)
解除条項が曖昧だと、関係悪化時に双方が苦しみます。
8. 瑕疵担保・損害賠償
成果物に重大な誤りがあった場合の対応を定めます。
- 瑕疵発見時の修正義務期間(通常3〜6カ月)
- 修正費用の負担
- 損害賠償の上限(通常は受託者の年間報酬額)
上限を決めておかないと、受託者側のリスクが無制限になります。
契約書テンプレートの入手先
ゼロから作る必要はなく、テンプレートをベースに調整します。
- 中小企業庁公開テンプレート
- 経済産業省のフリーランスガイドライン
- 弁護士ドットコム・クラウドサインのひな形
- freee・マネーフォワードの会計事務所向けテンプレート
テンプレートのまま使わず、自分の業務範囲に合わせて必ず加筆します。
電子契約の活用
2026年時点で、電子契約サービスが主流になっています。
- クラウドサイン(弁護士ドットコム)
- DocuSign
- GMOサイン
- freeeサイン
紙契約より2〜3日早く締結でき、印紙税も不要になるメリットがあります。
契約書レビューの依頼先
受託者側も契約書を鵜呑みにせず、必要に応じてレビューを依頼します。
- 弁護士(スポットレビュー: 3〜10万円)
- 社労士(労働者性の観点)
- 税理士(税務条項の観点)
初回契約時だけでも専門家レビューを受けると、後のトラブルを防げます。