退職から3ヶ月、本業のデザイン案件が月3件しか取れない駆け出しフリーランスが、請求書発行代行で月86,400円を作った。月720件の発行作業、時給換算で1,440円。国民年金17,920円(マネイロ)+国保+住民税を賄うための生命線になった。
2024年10月の郵便料金改定(84円→110円、日本郵便)以降、請求書発行代行の業界単価は少しずつ上がっている。1通あたり平均2〜3分の作業で実質70円前後の代行費が発生する構造は、駆け出しフリーランスが固定収入を作るのに適した水準だ。
請求書発行代行の業務内容と単価
請求書発行代行は、発注者から取引情報を受け取り、請求書を発行して発送・送付する業務。紙とメール(PDF)の両方があり、インボイス制度対応後は適格請求書の要件を満たすチェックも含まれる。
| 業務内容 | 1通あたり単価(手取り) | 1時間処理件数 | 時給換算 |
|---|---|---|---|
| PDFメール送信のみ | 40〜60円 | 30件 | 1,200〜1,800円 |
| 紙の印刷・封入・投函 | 70〜120円 | 20件 | 1,400〜2,400円 |
| インボイス要件チェック付き | 100〜180円 | 15件 | 1,500〜2,700円 |
| 月次まとめ発行(継続契約) | 月1万〜3万円/社(~50件) | ー | 1,000〜2,000円 |
相場情報は発注者向けの代行サービス比較(Meetsmore)を参照し、そこから手数料16.5%(ランサーズ)を引いた実手取りで計算している。
1ヶ月目: 紙の請求書発送で腱鞘炎一歩手前
1ヶ月目は「紙の請求書発送代行、1通90円、月300通」の案件に応募して採用された。作業内容は、発注者から送られたPDFを家のプリンタで印刷、三つ折りにして封筒に入れ、宛名ラベルを貼り、郵便局で投函する。
見落としていたのは三つ折り作業の疲労だった。200通を超えたあたりで手首が痛くなり、翌日に本業のデザイン作業でペンタブが握れなくなった。本業に支障が出たため、1ヶ月目の半ばで紙案件から撤退した。収入は、月半ばまでの作業分として18,240円。
2ヶ月目: PDFメール送信に全振り
2ヶ月目は「紙を扱う案件は全てお断り、PDFメール送信のみ受諾」に切り替えた。
- A社(月次契約): 月180通のPDFメール送信、月12,000円固定
- B社(月次契約): 月120通のPDFメール送信、月8,400円固定
- 単発案件: 320通×手取り50円 = 16,000円
- 合計: 36,400円
2ヶ月目で月36,400円。紙が無くなった瞬間に時給効率が一気に改善した。発注者にとっても、PDFメール送信は郵送コストがゼロなので1通単価を上げやすい。双方にメリットのある切り替えだった。
3ヶ月目: インボイス要件チェック付き案件で時給1,500円超え
3ヶ月目は、インボイス制度の知識を活かして「適格請求書の要件チェック+発行+送信」の案件を取った。具体的にはこんな案件。
- 発注者から取引情報(取引先名・金額・日付・品目)を受け取る
- 自社マスタに取引先の適格請求書発行事業者登録番号があるか確認
- 登録番号・適格請求書要件を満たす書式で請求書PDFを生成
- メール送信+送信ログをスプレッドシートに記録
1通あたり手取り135円、1時間で15件処理できる。時給換算2,025円。3ヶ月目の内訳は以下。
- A社継続(PDFメール送信): 月180通、12,000円
- B社継続(PDFメール送信): 月120通、8,400円
- C社新規(インボイス対応): 月240通、32,400円
- D社新規(月次発行代行): 月100通、15,200円
- 単発案件: 月180通、18,400円
- 合計: 86,400円
1日5時間×20営業日=100時間で86,400円、時給1,440円。駆け出しフリーランス3ヶ月目としては、本業案件と合わせて月15万円前後の収入が見える水準まで到達した。
インボイス制度対応が単価を引き上げた
2023年10月以降、請求書はインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応する必要がある。発注元の企業は、請求書1通ごとに以下の要件を満たす必要がある。
- 適格請求書発行事業者の登録番号(Tから始まる13桁)
- 税率ごとの合計額と適用税率の明示
- 軽減税率対象品目の明記
この要件を発注者が自分でチェックするには、経理担当者の時間が取られる。そこで「インボイス要件チェック+発行」を代行する案件が増えており、単純なPDF送信(1通50円)の2〜3倍の単価で発注されている。
駆け出しフリーランスでも、インボイス制度の知識を3日間勉強して身につければ、時給1,500円超えの案件に入れる可能性がある。筆者は国税庁のインボイス制度に関するQ&Aを3日間読み込んで、3ヶ月目に単価アップを実現した。
3つの失敗パターン
パターン1: 郵便料金改定を知らずに単価交渉で負けた
2024年10月に定形郵便料金が84円から110円(日本郵便)に改定されたが、筆者は1ヶ月目の応募時にこれを知らずに「1通70円で構いません」と提案してしまった。郵送コスト上昇分を発注者に転嫁できる交渉機会を逃した。業界のコスト変動は常にウォッチが必要だった。
パターン2: 紙の発送で本業に支障
1ヶ月目の紙案件で手首を痛めて本業のデザイン作業ができなくなった。本業の日給換算1万円×3日間の機会損失で、紙案件の収入を上回る損失。本業のある駆け出しフリーランスは、物理作業が入る案件を避けるのが鉄則だった。
パターン3: インボイス登録番号の入力ミス
「Tから始まる13桁」の登録番号を手入力していた時期に、2件で1桁間違いが発生。発注者の取引先に誤った番号の請求書が送付され、信頼を大きく損ねた。Excel関数で桁数チェックと先頭"T"のバリデーションを入れてミスをゼロにした。
この仕事が向かない人
請求書発行代行の在宅ワークを始めるのは、次の条件に当てはまる駆け出しフリーランスには向かない。
- Excelの基本操作に不慣れで、VLOOKUP・関数での桁チェックができない人
- インボイス制度・適格請求書の基礎知識を勉強する時間が取れない人
- 本業が物理作業(封入・発送)に支障を出す職種の人(デザイナー・イラストレーター等)
- 月20日の連続作業時間が確保できない不規則な生活の人
- 数字や登録番号のダブルチェックが苦手な性格の人(1件のミスで継続契約を失う)
逆に「Excelとインボイス制度の基礎は押さえてる」「本業案件の合間に毎日5時間は取れる」「PC作業が中心で物理作業を避けられる」という駆け出しフリーランスには、時給1,400円超えが見える収入源になる。
月次推移(開始〜3ヶ月目)
| 月 | 1日作業時間 | 月総時間 | 月収入(手数料後) | 時給換算 |
|---|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 3.0時間 | 48時間 | 18,240円 | 380円(紙案件で腱鞘炎) |
| 2ヶ月目 | 4.0時間 | 80時間 | 36,400円 | 455円 |
| 3ヶ月目 | 5.0時間 | 100時間 | 86,400円 | 1,440円 |
2ヶ月目から3ヶ月目の時給3倍化は、インボイス対応案件の単価効率が効いた。4ヶ月目以降は月10万円超えが現実的な射程に入る。
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