退職から3ヶ月、本業のWeb制作案件は月に2件しか取れない。その穴埋めで始めた経理BPO(記帳代行・経費精算入力)で、3ヶ月目に月72,340円まで到達した。時給換算1,186円。東京都最低賃金1,226円(東京労働局)にわずかに届いていない水準だが、国民年金17,920円(マネイロ)と国保を自分で払う駆け出しフリーランスにとっては、固定費の半分を埋める生命線だった。
「クラウドワークスで経理代行やれば月10万円」と書いている記事は多いが、3ヶ月目でそこまで行くのは現実的ではない。日商簿記3級を持っている駆け出しフリーランスが、どんな案件を拾い、どこで時給が下がり、どこで伸びたかを丸めない数字で記録する。
経理BPO案件の3つの階層
在宅で受けられる経理BPO案件は、大きく3階層に分かれる。駆け出しフリーランスが最初に取れるのは下の2階層だけだ。
| 階層 | 業務内容 | 1件/月あたり単価 | 要求スキル |
|---|---|---|---|
| 初級 | 経費精算の入力代行 | 月1,000件で1〜3万円(CW) | Excel基本操作 |
| 中級 | 記帳代行(仕訳入力) | 1仕訳40〜60円(記帳代行相場) | 日商簿記3級相当 |
| 上級 | 月次決算まで一貫 | 月額3〜5万円/社 | 簿記2級+実務経験 |
筆者は日商簿記3級と前職での簡単な経費精算経験だけだったので、初級の経費精算入力から入った。月1,000件のボリューム案件を1件取れば、それだけで月2万円のベース収入が確保できた。
1ヶ月目: 単価に惑わされて時給620円まで落ちた
1ヶ月目は「記帳代行1仕訳80円」と書かれた案件に応募して採用された。単価は高いが、実際に作業すると1仕訳あたり平均5分以上かかる。領収書の写真を見て勘定科目を考え、摘要欄を書き、税区分を判断する。時給換算すると960円。そこからランサーズの手数料16.5%(ランサーズ)が引かれて、手取り時給は約802円まで下がった。
さらに悪いことに、最初の10件で勘定科目を1件間違えて「雑費」にしてしまい、発注者から全仕訳の再チェックを依頼された。結果、1ヶ月目の収入は12,800円。時給に換算すると約620円。東京都最低賃金の半分だった。
2ヶ月目: 経費精算の単純入力に軸足を切り替えた
2ヶ月目は戦略を変えた。記帳代行は一旦休止し、経費精算の単純入力に特化。1件あたりの単価は仕訳より低いが、判断を求められる場面が少なく、Excelショートカットを使えば1時間で200件処理できた。
| 作業内容 | 1時間あたり件数 | 時給換算(手数料控除後) |
|---|---|---|
| 記帳代行(仕訳判断あり) | 18件 | 802円 |
| 経費精算(単純入力) | 200件 | 1,420円 |
| 領収書写真の勘定科目分類 | 95件 | 1,050円 |
2ヶ月目の収入は41,620円に伸びた。経費精算の単純入力を1日5時間続けると、月100時間で42,000円前後。駆け出しフリーランスとしては「本業の合間にできる最低限の収入確保」の水準に達した。
3ヶ月目: 継続クライアント2社で月72,340円
3ヶ月目は2つの転機があった。1つ目は、2ヶ月目の経費精算入力で評価★4.9を取った発注者から「継続案件化しませんか」と声がかかったこと。月契約で25,000円固定(月1,100件想定)の提示だった。2つ目は、別の税理士事務所から記帳代行の依頼が来たこと。こちらは1仕訳45円だが「最初は簡単な仕訳だけでいい」と配慮があり、時給換算で1,280円まで到達できた。
結果、3ヶ月目の内訳は以下のようになった。
- 経費精算の継続契約(A社): 25,000円
- 記帳代行(B税理士事務所): 32,800円
- 経費精算のスポット案件(C社ほか): 14,540円
- 合計: 72,340円
1日6時間×20営業日=120時間で72,340円、時給換算1,186円。東京都最低賃金1,226円に40円届かない。この40円の差は、手数料と「継続案件を取るために相場より安く受けている割引分」だった。
3つの失敗パターン
パターン1: 単価の高い記帳代行から入って挫折
日商簿記3級の実力で「1仕訳80円」案件に飛びつくと、判断に時間がかかり、差し戻しが発生し、結果的に手取り時給600円台まで落ちる。実務経験ゼロなら1仕訳40〜50円の簡単案件から始めるのが結局早い。
パターン2: 手数料を忘れて単価計算
ランサーズ16.5%、クラウドワークス20%(クラウドワークス)の手数料を忘れて「月8万円稼げた」と計算していたら、手取りは6.4万円だった。駆け出しフリーランスは手取りベースで損益を管理する必要がある。国民年金17,920円+国保+住民税の固定費を賄えるかが判断基準。
パターン3: 確定申告の準備を後回し
フリーランス初年度は青色申告の申請期限を逃すと白色申告になり、65万円控除が受けられない。3月16日の確定申告期限直前に慌てて領収書整理を始めて、本業案件の納期を落とした。経費領収書は週1回スマホで撮影してクラウド会計に放り込む運用に変えた。
この仕事が向かない人
駆け出しフリーランスが経理BPOで食いつなぐのは、次の条件に当てはまる人には向かない。
- 日商簿記3級相当の知識がなく、勉強する時間もない(案件に必ず知識判断が必要)
- 月20万円以上の固定収入が必須(経理BPOだけでは3ヶ月目でも月7万円前後が現実)
- 数字や記号の入力を長時間続けると集中力が切れる人(ミスが収入に直結)
- 本業の案件が安定していて、副業的にやりたい人(継続契約は1日の作業時間コミットを求められる)
- 確定申告・青色申告の手続きを面倒だと感じる人(自分で処理する覚悟がない人)
逆に「簿記3級はある」「本業案件が取れるまで3〜6ヶ月のつなぎが必要」「毎日5〜6時間の固定作業時間を確保できる」という駆け出しフリーランスには、月7万円水準の補填先として現実的な選択肢だ。
月次推移(開始〜3ヶ月目)
| 月 | 1日の作業時間 | 月作業時間 | 月収入 | 時給換算(手数料後) | 時給と最賃1,226円の差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 3.5時間 | 70時間 | 12,800円 | 約620円 | -606円 |
| 2ヶ月目 | 5.0時間 | 100時間 | 41,620円 | 約970円 | -256円 |
| 3ヶ月目 | 6.0時間 | 120時間 | 72,340円 | 約1,186円 | -40円 |
時給ベースで最低賃金に並ぶには、継続案件比率を上げて営業時間のロスを減らすしかない。4ヶ月目以降に継続契約を3社に増やせば、時給1,300円超えが見えてくる。
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